歯を「削らない」ための代償とは
こんにちは。
削らない歯科医の池村です。
歯は削らないほうが健康寿命が延びるのですが、削らないためには患者さんサイドの代償と、我々の代償があります。
患者さんが払う代償は、
- 保険外診療で高額に思えるお金(でも生涯医療費を考えたら断然安い。スウェーデンが証明しています)
- 患者さん自身の労力(今までなぜ悪くなってきたのか知識を得る、今後悪くならないようにするための行動)
当院が払う代償は、
- 特別歯に興味のない患者さんに嫌われること。
- 保険外診療なのを罵られること。
こんな感じかな。
まず患者さんサイドの代償から細かくお話してみます。
1. 「削らない」は保険外です
保険証を提示して受けられる診療は保険診療です。
保険診療はめちゃくちゃ細かくルールが決まっています。そして…
歯科においては、歯を削らないと診療報酬を頂けないシステムです。
しかも、他の先進国のどこよりも安い診療報酬なので、日本の歯医者さんは数をこなさないといけません。
必然的に歯科医院に行けば削られる運命が待っています。
先日もオンラインセカンドオピニオンで、その方が思っていた以上に削られて大変悔しい思いをしていると切々としたお話を聞きました。
「今は色々調べて知識が増えたけど、今の知識があれば絶対にこんなに治療しなかったのに!」
と後悔しきりでした。
このように、基本は歯科治療=歯を削る、です。
「そんなことないよ!わたしの通っている歯医者さんも削らないほうが良いって言ってあんまり削らないよ!」とおっしゃる方。
もちろんそういった先生もいらっしゃると思います。
私が思うに、そういった先生はすでに開業時の借金を払い終わっている先生だと思いますよ。
どういうことかと言うと、
医科もそうですがクリニックというのは事業です。
開始時に公庫さんや銀行さんから事業資金をお借り入れして、内装工事や高額な医療機器を購入しています。
借りたら返さねばなりません。
稼ぎ出すお金は、毎月返すお金だけでは足りません。固定費(家賃とかその他)や人件費もかかります。つまり、それらを十分払える利益を出さないといけません。
利益を出すためには、歯を削って治療しないといけません。
つまり、
削る必要がないということは、借金を払い終わって必要な利益額が減っている悠々自適な先生なのかなと推察されます。
または、あなたは削られなかったとしても隣の椅子の人がめっちゃ削られてるとかね。
池村が昔勤めていた歯科医院で、色々、それはもう色々治療をした方がいました。
でもお会計は再診料のみ。
当時の上司いわく、もう保険点数取れない状態なんですって。
「それはさすがに…自費診療でいくらかもらえないのでしょうか?」と池村が訊いたら、その院長なんて言ったと思います?
他の人を削って月の売上を確保するんだよ、って言ったんですよ。
こんな話はたくさんあります。
では、削られたくないあなたは「保険外で良いから削らない治療で有名なドックベストセメントで治療したい!」と思ったかもしれません。
すでに神経がない歯を何とかしたくて、歯髄再生療法をしたい!と思ったかもしれません。
でも、ちょっと待って。
治療の繰り返しの先に、安寧はありません。
せっかく治療した歯がすぐダメになってしまったら悲しくないですか?
歯が悪くなってきた原因は依然お口の中にあるはずですよ?
そもそも、皆、治療前提だから話がおかしくなります。
「治療に至らしめない」という選択肢もありますよ。
だけど、「今削ることを選択しなくても、歯は長持ちしますよ」と情報提供するのは保険診療では報酬がありません。ただ働きです。
自費診療だったとしても、インプラントやセラミックのように「歯」という現物が口の中に入るわけでもなく、矯正のように目に見えてきれいになるわけでもない「情報」に、日本人はお金を払うことを渋る傾向があるみたい。
でも、ただ削られて後悔してきたあなたに一番必要だと思うからこそ伝える。
だから、保険外です。だから、年間サポートプランです。
歯を悪くしないための予防処置と、歯を悪くしないための情報提供が一つのパックになっています。
悪くなる前から対処しておけば、つらい治療を何度も受けなくても良いのです。
また、すでに悪いところがたくさんある方も、これ以上悪くならないためには治療よりも口腔環境を安定させて再発のリスクを下げるほうが断然今後の再治療率も下がるし再治療の金額も低く済むのです。
2. 患者さん自身でケアすることが多い
実は、最初にむし歯を作って削られるハメになったのは、ご自身の無知と無知ゆえの行動がきっかけです。
知らず知らずに自分で歯をダメにしています。
それが事実。
事実を飲み込んで、生活を改善して下さる方は改善します。
歯磨きするだけじゃないですよ?
歯磨きも、できているつもりでできていない方が多いのも確かですが、歯磨き上手なだけでも改善は難しいです。
自分で言うのもいやらしいかもしれませんが、ここ1週間だけでも、
- ここで言われたとおり、食事に氣を付けて医療用サプリも飲んでいたら目も良くなった!(栄養は全身にいきわたるから、歯だけじゃない恩恵をついでに受けることが多い)
- (家族でいらしてくださる方が)ダンナがまったく歯磨きしなかったのに、ここ(当院)に来てから誰よりも朝早く起きて歯磨きをしている!凄く変わった!
- 以前はちょくちょく腫れていた歯肉が、気が付いたら、ここに来てから1年以上腫れていない。
などなど、しっかりご自身の体に向き合って結果を出してくれた患者さん達から嬉しいお声を頂いています。
口の中が悪くなるにはそれなりの理由があります。
どうして虫歯になっちゃったの?
これを突き止めて解決しないと、削っても削っても永遠に再治療の繰り返し。あなたの歯は削られてどんどん小さくなっていくのです。
当院では最初に2時間かけて、口の中が悪くなってきた原因を検査して、検査結果から患者さんにおそらくこのようにして歯が悪くなってきたのだろうと情報を提供し、
それから今後悪くならないように必要なことを一緒に行っていきます。
ご自身の生活を改善しないといけないこともたくさんあります。
でも、労力を惜しまないで下さい。
削られ地獄から脱出するにはご自身の努力が不可欠なのです。
次は、患者さんサイドではなく我々の代償をご紹介しますね。
3. 患者さんから罵られる機会が多い
保険外ということで、罵られることも多いです。
ホームページでもYouTubeでも過去のブログでも、池村の書籍でも、削らないためのケアや治療は保険外、と言うか、保険診療はとにかく何か処置をおしないと点数が発生せず、削らないでケアをする・見守る・守るという項目がない、とお伝えしています。
なんなら結果出してくれている方の口コミにも書いてくれています。
で、
「院長のYouTube見た。気になっているところがあるから診て欲しい」という電話が来たとします。
YouTubeの動画を1~2本だけ見て、当院の方針を確認して頂いていない例も多いのでそのお電話で当院の方針を軽くご説明させて頂くのですが、
「自費診療は高いから払えない、レントゲンも被爆するから嫌だ、気になるところだけ診て欲しいから検査もいらない」と言われてしまったらどうでしょうか?
むちゃの宝石箱や~!
レントゲンやその他の検査がないと見ただけではわかることが限定されます。
歯科医師を魔法使いかなんかと勘違いしている方がしばしばいらっしゃるのですが、池村もあなたと同じただの人間です。
そして、悪くなる原因を口の中から排除する!悪くならないようにする!という当院の方針を全否定!
それでも昔はそんなむちゃぶりの方にもわかる範囲のことをお伝えして、保険診療で出来る範囲のことをしていました。
でも、「え、それだけ?」みたいな感じになる!絶対なる!!!
すると「他の歯医者さんと変わらなかった」って捨て台詞吐いて去っていくんですよ!
過去そんな方たくさんいた!
だいたい、保険診療の範囲の歯科医院の対応に不満をもって、何か他の診断や治療を求めて当院にかかりたいという前提のはずなのに、当院にも保険診療要求するのはどういうことなの?
保険診療は全国一緒!どんなベテランがやろうと研修医がやろうと一緒!全部ルールが決まってる!
もちろん、何もご案内もなく来院して頂いて、最後に窓口で高額な保険外の診療代金を提示・請求されるのだったら、よろしくないですよ。そんななら「ぼったくり歯医者」と罵られるのもやむなしですよ。
当院はぼったくり歯医者ではないので、予約を取ろうとするお電話で先に当院の方針をお伝えしています。
が! 不機嫌にガチャ切りされたり罵られたりすることがしばしばある!
それがつらくて、一時期電話を自動音声対応にしていたこともあります(今はスタッフが出てくれますよ)。
電話だと限界があったので、オンライン初診で先によその歯医者さんとコンセプトや治療方針の何が違うのか、ご納得してから来院という形にしたんです。
たった2200円。めっちゃ安価。廉価。
正直、ご連絡いただいてから、オンラインカウンセリングの日どりを確定するために予定を確認したりメールのやり取りをするのだって、人件費かかってますよ。
でも来院してから、
「ここじゃなかったー!」
「その金額なら来なかったー!」
「わたしは歯にお金なんてかけるつもりはないの!ただただ安くあればクオリティも将来もどうでも良いの!」
ということになると、患者さんの時間を奪うことになります。
なので、来院前に患者さんのご希望の未来と当院の方針がマッチングするかどうか、確認のお時間をオンラインにてお取りしています。
身体が遠隔地にあれば、わざわざ来院の時間を取らなくて済むし、歯科が怖い方は「氣付いたら削られていた…だと…!?」という思いをしなくて安心安全ですよね。
世の中の歯科医院ではいまだに患者さんの同意を取らずに削り始めちゃうところ、まだあるみたいですよ?ご来院の患者さんの情報ですけど。
わたしがこの患者さんの身体ファースト(患者さんの感情ファースト、ではない)の姿勢を今も続けていられるのは正義感だけ。
何度『もうめんどくさいから全部の歯、削っちゃおうかなー』って思ったことか。
『自分では良くしようと行動もしないけど罵ってくる人のために丁寧に歯科治療しないといけないの?しかもケアもしないなら良い結果出るわけないじゃん。人のこと、ヤブだのぼったくりだの言うけど、実は悪くしてるのご自身なんですけど…』って、思っちゃったんですよね。
だからオンラインカウンセリングだし、歯科ドックだし、年間サポートプランを作りました。
まずはケアしないとどんな治療も良い結果はでない。
ケアしておけば大したことないむし歯はむりやり「治療」しなくても良い。
「治療」が必要かどうかはがっちり「検査」しないとわからない。
自分が今どういう状態で、何をしなくちゃいけないのか・何をしてはいけないのか。歯科医師という他人任せではなく自分の身体や現状を理解して、責任もって良くしていかないといけない。
わかってくれる方が最近は増えてきたけど、でもまだ大変。
年サポ高いってやっぱり罵られてますw
普通に削る歯医者だった時に、歯が悪くなる原因をそのままにして普通に削って詰めて、いまいち結果でなかったり再治療の頻度が高かったりしても罵られてたけどw
ちなみに池村だけじゃないんですよ。
保険診療・自費診療に関わらず、歯医者さんが患者さんに罵られる話。
自費診療専門の歯医者さんが、「お高くとまりやがってよ~!」って受付で罵られている現場を、見学しにいった歯科医師が目撃した話を聞いたこともあります。
保険診療中心の歯医者さんでも、ルールの中で何とかしてあげようともがいているのに「こんなにすぐダメになるなんて」「先生のせいで!」って罵られてつらい思いをしている先生の話は枚挙にいとまがありません。
日本国民、歯科医師をサンドバックにしすぎじゃない?
そういえばうつみん(有名な毒舌内科医)が、「権利者意識の肥大化した日本人」とかどこかで書いてたんだけど、そういうやつです!
これを読んでくださっているあなたはそんな人とは違うとわかっていますけどね。
どうせ罵られるなら、もうクオリティの低いことをわざわざするのをやめたんですよ。
それより歯が悪くならないことをしようぜ!って思っています。
普通の歯医者さんで、数年おきの治療費(削ったりインプラントしたりその他もろもろ)+クリーニング代(安いけど特に予防効果ない)
と、
当院の削られないための年間サポートプラン
正直あんまり値段変わらないですよ。むしろ安い。
毎年セラミック1本被せる、毎年歯がダメになってインプラント入れる、ならもっとすごい金額かかりますよ。
治療費よりも安いお金で歯が維持できるなら、むしろお得。
患者さんの健康な人生を守れるのは当院です!と自信を持っています。
素直に削られるのもその人の人生。自分を守るための知識やケアに投資をして歯の健康を保つのも人生。
気付いて、自分で情報を取りに行く、行動を起こせる人だけが自分の内臓を維持できるのです。
こういうことYouTubeで言うと、「上から目線」とかコメント書かれたりもしますが(やっぱり罵られるw)、色々な患者さんを拝見していると、事実なんだよなあ。