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小児の育成矯正が必要な「歯列不正」の例

こんにちは。
削らない歯科医の池村です。

「歯列不正」とは、歯並びや咬み合わせが悪いこと。
パッと見てすぐに『あ、この子歯並び悪いな』とわかる歯並びもあれば、一見歯並びは悪くないのだけど実は問題がある咬み合わせもあります。
一見悪くない場合はそのまま放置され、むし歯や歯周病など歯が悪くなる条件を助長します。
さらには口の中の話だけでなく、呼吸障害で命の危険も出てきてしまう咬み合わせもあります。

成人になってから咬み合わせを変化させようとするととてつもないストレスがかかりますが、兆候が表れている子供のうちから対処すれば大人になってからのトラブルを回避できます。
その子の人生・健康は安心です。

小児の育成矯正は、ただ歯並びを良くするだけではありません。
呼吸や姿勢を整えてその子の持っている能力を最大限発揮できるようにできる方法です。
一般的な矯正とはちょっと違いますね。以前書いたこちらのブログも参考にして下さい。
「様子を見ましょう「永久歯に生え変わってから…」では遅い子供の歯並び

では、「歯列不正」の具体例を挙げていきます。
レベルが低いほど、「矯正した方が良い」とわかりやすく、レベルが高いほど「まさか!歯はきれいに並んでるのに!?これが悪い歯並びだったなんて!!」という感じです。
あなたのお子さんは大丈夫でしょうか?確認してみてください。

レベル1.叢生

歯が並べずに混みあってガチャガチャしている場合。
これは歯医者さんの言葉で叢生と言います。
叢生はわかりやすい歯列不正です。

歯並びが悪くなってしまうのは顎が小さく歯の大きさが収まりきらず重なって生えてしまうからです。
顎の骨を大きくすると解決していきます。
顎の骨の成長の時期を逃してしまうと、後でできる事は、歯並びのアーチをきれいにしようとしてせっかく生えてきた永久歯を抜歯して小さなアーチにまとめることです。
歯並びはきれいになりますが、小児の育成矯正で顎の骨を大きくした結果得られる子供の利点は手に入りません。
利点とは、顔立ちがきれいになる、集中力が増す、運動機能も集中力も高まる、姿勢も良くなる等のことです。「様子を見ましょう」「永久歯に生え変わってから…」では遅い子供の歯並び

この叢生を放置すると、ガチャガチャしている歯並びは歯磨きがしにくいので、むし歯の発生率が高くなります。
中年以降に歯周病を発生させている方も多いです。

矢印のところなんかは、何の手入れもせずにいた中年の方はだいたい歯周ポケット6ミリ当たり前な感じ(歯と歯肉の間は1~3ミリが健康であるといわれています。1ミリでも3ミリでも触っただけで血が出たら病気なんですけどね)。

虫歯でもなんでもないのにはみ出た歯の神経が死んでいる症例もみたことがあります。悪い咬み合わせが歯の神経にダメージを与えてしまい、歯の神経が死んでしまったようでした。
リスクのある歯並びを放置しないほうが良いです。

レベル2.反対咬合(受け口、下顎前突)

通常、上の歯が下の歯に覆いかぶさっているものですが、逆に下の歯が上の歯を覆ってしまう噛み合わせ。

見た目ですぐわかります。
上顎が小さく下顎が普通の場合もあれば、上顎が極小で下顎が小さい場合、上顎が普通で下あごが育ちすぎな場合もあります。

実は、乳歯の段階で受け口と言うのは、完全に上顎が小さい症例です。
上顎が小さすぎるので、上顎の成長が9割終了する10歳までに必死で上顎骨を成長させないといけません。
だから、受け口は、5歳から治療開始しないと間に合わないです。
治療を開始して、乳歯列で一回受け口が治ったかのように見えるタイミングがありますが、上の前歯が生え変わる時にまた受け口になりがちです。
その場合は上の前歯の永久歯が生えてきたら再度受け口を治す治療を開始しないといけません。
ここで、受け口なのに、下の前歯がガチャガチャしている、つまり下顎も小さい場合は、上顎はめちゃくちゃ小さいということになります。
上顎の拡大はものすごい量が必要になります。
つまり、小学校上がってからだと間に合わないかもしれないのです。

受け口は

  • 顎の関節がおかしくなるリスクがアップ
  • 異常なかみ合わせで永久歯にダメージを与えて歯の寿命をダウンさせる可能性も大
  • 歯を詰める被せるとなった場合、イレギュラーなかみ合わせなので治療が難しく、詰め物・被せ物の劣化が早くなることもある
  • 美醜にも大きくかかわる

とかなりやっかいです。

受け口じゃなくても、上顎劣成長は鼻腔が狭くなり呼吸に不利です。
呼吸がイマイチってことは集中力もダウン、成績やスポーツも最大のポテンシャルが発揮できない。
顔のメリハリもイマイチでのっぺりした顔になってしまいます。
目鼻立ちシャッキリした方がイケメン・美人さん扱いなのは今の文化ですよね?
平安時代ならのっぺりが美形でしたけどね。
とにかく、受け口は小学校上がる前が治療介入のタイミング。
「様子を見よう」は後であなたの大切な子供の美醜やポテンシャルに大きな影響与える場合があります。

先日、学校検診の紙をお持ちになった女児とお母さまが来院しました。
学校検診の紙くらい、もちろんすぐ書いてあげられるのですが、
小学1年生だという女の子がすでに明らかな反対咬合でした。
しかも下の前歯が叢生(歯が並びきらずにゴチャってる)。
これは何を意味するかというと、

  • 下の前歯がゴチャっているということは、下顎が小さい
  • 下顎が小さいのに反対咬合ということは、上顎は特別に小さい
  • すでに小学校1年生ということは6~7歳である
  • 上顎の成長が9割終了する10歳まであと3~4年しかない
  • 特別小さい上顎を必死で大きくしないといけない
  • 前歯がすでにゴチャっている下顎も大きくしないといけない

これを放置し、成長期を逃してしまうと、場合によっては「骨切り」という顎の骨を切る大手術が必要になってしまう可能性が高いです。
急いだほうが良いと保護者の方にお伝えしましたが、当日はこの話をするほど時間の余裕がなく、別の日にアポイントを取りました。
しかしその後、アポイントはキャンセルのまま。
ことの重要性を最初にお伝え出来なかったのが忸怩たる思いです。
女の子は美醜に関わる問題なのでとても心配しています。
またこのような話を口頭でおひとりおひとりにするのは難しいと判断し、それでもとても大切な情報なので、今回このブログを書くに至りました。

レベル3.切端咬合

通常、上の前歯は下の前歯を少し覆っています。
しかし、上の前歯と下の前歯が切端(さきっぽ)で咬んでしまっている咬み合わせのことを切端咬合と言います。

前歯にダイレクトに咬む力が加わります。
前歯の歯根は1本です。咬む力がダイレクトに加わると、歯根が2本・3本の奥歯に比べて不利です。
この咬み合わせでよく起きてしまうトラブルは、前歯が欠けたり折れたり。前歯がグラグラしたりそれにより歯周病の進行が早まったり。
前歯を治しても常に大きな負荷がかかるので前歯の寿命は正常な咬み合わせの人に比べて短めになりがちです。
前歯に負荷がかかるので、エナメル質にひび(クラック)(赤い矢印)が入りやすく、茶色い縦の線が歯に浮き上がっている方も多いです。

↑予防を徹底する前の10年以上前の写真だから、歯に凄いプラークついていてお見苦しい写真で申し訳ない!

赤い矢印の反対側の歯の縁、なんかブツブツしてるのわかりますか?
これ、細菌の塊です。あなたはフロスや歯間ブラシをきちんとして、こういう細菌を毎日取り除きましょうね。

歯は一見きれいに並んでいるので不正咬合と気づかないで放置される場合も多いですが、叢生を併発していることもあります。

以前のブログでお話した通り、上顎と下顎は骨の成長時期にズレがあります。
小児期の段階ですでに切端咬合であるならば、第二次性徴の時期にレベル2の反対咬合(受け口)に移行する可能性が大いにあります。
反対咬合までいかないにしろ、切端咬合は上顎の骨が成長しきれていないことから起こる不正咬合です。
上顎の成長期(10歳くらいまで)に上顎の成長を促すことができれば、切端咬合によくあるトラブルは頻発しにくくなるでしょう。
骨の成長期を逃してしまった方は、正常な被蓋(この場合、下の前歯を上の前歯が覆うこと)にするために下の歯の小臼歯という歯を抜歯して下の歯並びのアーチを小さくしていく矯正治療がメジャーです。
また、最近ではインビザラインなどのマウスピース矯正で、じんわりと上の歯並びのアーチを広げることはできます。
じんわり広げられたら抜歯のリスクは多少減るでしょう。
しかし広げられるのは歯槽骨という範囲。顎骨は大きくならないので、顎の骨を大きくした利点(鼻腔を広げるだとか、目鼻立ちがくっきりするだとか)は残念ながら手に入りません。

レベル4.開口

前歯が咬みません。奥歯にばかり咬む力がかかります。
きっちりと歯磨きができたとしても、咬む力の負荷が強くかかる奥歯にトラブルが起きやすいのです。
負荷がかかっている奥歯は、歯が欠けたり、欠けたところからむし歯が始まったり、歯の周囲の組織もダメージを負うのでグラグラしやすくなったりします。
つまり、むし歯も歯周病も細菌のリスクよりもパワーにより進行しやすくなるのです。
過剰なパワーが奥歯にかかるので、正常な歯並びの方よりも奥歯の寿命が短くなります。
お蕎麦も咬み切れません。
そもそも、咬める歯が少ないのでお食事は一生懸命モグモグしても、ほぼ丸のみ状態です。
胃腸に負担がかかります。
いくら保護者が身体によいものを、と食事に氣を使ったとしても、消化吸収が上手くできずに栄養状態も悪くなるでしょう。
舌に変な癖があったり指しゃぶりの癖があたりすると開口になりやすいです。
成長期のうちからこの癖を治しておくと、歯並びも治っていきます。
小児の育成矯正では、この悪い癖(口腔悪習癖)を訓練で治していきます。

歯はガチャガチャしていない場合は、本人もご家族も氣にしていないこともありますが、顔の筋肉(口腔周囲筋)のバランスが崩れるので美醜にも関わってきます。
咬んでいる奥歯をうっかりむし歯にしてしまった場合、被せ物の噛み合わせの付与に悩む不正咬合です。要するに治療が難しい咬み合わせということです。

歯は一見きれいに並んでいるので不正咬合と気づかないで放置される場合も多いですが、叢生を併発していることもあります。

レベル5.過蓋咬合

歯並びが一見良くて見逃されている可能性が高い不正咬合です。
歯科医院で指摘されて、「まさか不正咬合だったとは!?歯並びは良いと思っていた!」と驚かれるケースが多いです。
見分け方としては、奥歯でしっかり咬んだときに、下の前歯が見えないほど上の前歯が下の前歯を覆い隠している状態の噛み合わせです。

【一見きれいな歯並びの過蓋咬合】

このような噛み合わせの方は、咬みこみが深すぎて、かみしめるパワーにより歯を噛み砕くトラブルを起こしがちです。
エナメル質の結晶にヒビが入りやすく、そのヒビから虫歯になるリスクも高くなります。
歯が欠けたり、虫歯になったりした部分に人工物を詰め、機能回復を図ろうとしても、
後日詰めたものがパカパカ取れたり砕けたりトラブルが起きやすい、非常に歯科治療が難しい噛み合わせになっています。
咬みこみが深いことで歯が生えている歯周組織にもダメージを与えがちで、咬む力で歯をグラグラさせてしまい、歯周病を進行させてしまうリスクもあります。

また、咬みこみが深いということは、口の中が狭いのです。狭いと舌がノドの奥に押し込まれてしまい、気道が圧迫され気道が狭くなりがちです。
中年以降に夜間無呼吸症候群の発症など気をつけなければいけない咬み合わせとなっています。夜間無呼吸症候群では重症になってくると、就寝時に呼吸が取れるように、就寝時にシーパップ(CPAP)という機械を使用する必要が出てきます。

↑CPAP装着の絵

当院の患者さんでも、重度の睡眠時無呼吸症候群で、出張先のホテルにもこの機械を持っていかないといけないという方がいらっしゃいます。

命にかかわる不正咬合なので、治療の必要が大いにありますが、見た目に歯がきれいに並んでいるケースは見逃されがちです。
また、叢生を併発している場合もあります。

【叢生を併発している過蓋咬合】

「矯正治療」はいつでもできる、けど…

もちろん顎の成長期の後でも、歯を並べることは可能です。
一般的なワイヤー矯正を行っても構わないですし最近流行のアライナー矯正(マウスピースを使った矯正) も良いものです。
しかしどちらも顎の骨の大きさまでは変えられない。
歯が並ぶスペースがないのですから、場合によってはせっかく生えてきた永久歯を抜歯して混みあった歯を並べていきます。
せっかく生えてきた大事な永久歯を抜歯して小さくまとめれば、歯並びはきれいになります。
しかし、最初にご紹介した顎の骨を大きくする利点は得られません。

6歳前後のお子さんをお持ちの保護者様は、ぜひお子さんの未来と健康をより良くするためにも、お子さんの歯並びを確認してみて下さい。

歯並びの悪さは遺伝要因だけではない

よく
「わたしも歯並び悪いから…」
「この子の父親も…」
と遺伝要因だけをおっしゃる方がいますが、歯並びの良い悪いは遺伝だけではありません。
(同様に、むし歯なりやすいも遺伝や体質だけではありません。それはまた今度ブログにしてみますね)
骨格性の下顎前突はかなり遺伝要因の色が濃いのですが、歯列不正は下顎前突だけではありませんね。
顎の骨の劣成長が大きな要因です。
実は顎の骨が大きく育たない原因は「口腔悪習癖」と「生活習慣」「栄養不足」が考えられます。

「口腔悪習癖」については、昨今のコロナ騒ぎによる学校でのマスク強要で甚大な被害が出ています。
マスクをすると、呼吸が苦しいのでどうしても口呼吸になりがちです。
子供にマスク生活を強要する風潮が数年続いてしまったおかげで、今の子どもたちの歯並びが軒並みひどいことになってしまっているようです。
学校の歯科検診をする先生から聞いた話ですが、95%くらいの児童が歯列不正(歯並びが悪い)と言うのです。コロナ前と全然違う!とおっしゃっていました。
日本人というのはもともと歯並びが悪いと海外で有名なようなのですが、さすがに95%は多すぎかな。
遺伝要因じゃなくて環境要因が大きそうです。
歯並びが悪くなるリスクを生活の中から排除していきましょう。

当院の顎の骨を大きくする育成矯正の特徴は4つ!

1、当院では歯並びが悪くなる癖を訓練して直していきます。

訓練だけでは歯が並ばないと診断した場合は、訓練と合わせて必要な装置を使います。
子供だけの訓練だと結果が出にくいこともあるので、親御さんにもお子様の生活指導をしてもらいます。

2、生活習慣・生活環境も、お子さんの歯並びを左右します。座り方・立ち方やお食事の摂り方などとても大切です。

当院が所属しているTHP式歯並び育成法では、毎月1回、保護者の方のためのZOOMを開催しています。
そのZOOMには歯科医師のみならず、姿勢のプロのカイロプラクティックの先生もいらっしゃるので
生活の中の歯並びを良くするための改善方法を具体的に聞ける機会があります。
歯科医師はともすれば視野が頭頚部に偏りがちですが、カイロプラクティックの先生がいらっしゃることで、全身の状態から歯並びを良くしていく視点が得られます。

3、骨を成長させるための栄養も必須です。

当院は栄養療法(オーソモレキュラー療法)という、薬に頼らず病気になる前に健康を維持する方法にとても力を入れています。
これは、成長期のお子さんにもとても大事な知識です。この知識があれば、日々のお子さんのこまごまとしているけれども「困ったなぁ…」という行動が減っていきます。

具体的には、

  • 朝、起こされないと起きない
  • そわそわと落ち着きがない
  • 感情が安定しない
  • 集中力が続かない

などなどです。
この程度であれば個性と言っても良いのかもしれません。
お食事を変えて頂くとぐっと変わって落ち着いてお話しできるいわゆる「良い子」に様変わりすることも多いです。
予防歯科でお見えになるお子さんたちの様子を見て、親御さんにお食事の話をして、次回来院の際にお子さんの「ちょっと困った」が改善されて喜ばれることも多いです。
小児の育成矯正のプランでは、お子さんの食事の改善のカウンセリングや、必要であれば医療用サプリも併用していきます。

4、予防歯科も併せて行います。

当院はもともと予防歯科で定評があります。
せっかく小児の育成矯正のために来院してもらうのに当院の予防歯科を体験しないなんてもったいない!ということで、小児の育成矯正のプランには当院の痛くないばっちり効果のある予防も入っています。
この予防は効果が高く、すでにむし歯になっている成人のむし歯でも、数年削らずに済むような実績がたくさんあるやりかたです。
この歯を悪くしない・削らないための「年間サポートプラン」が小児の育成矯正には丸々入っています。
顎の骨の成長も促しつつ、スウェーデン式の全く痛くない、歯も傷つけない本当の予防歯科を受けていれば、歯を守るための知識も増えて、お子さんの歯の健康の土台はどっしりと確立され、将来に渡り大事なお子さんの歯と健康を守ってくれるでしょう。

ご興味ある方はお気軽にオンラインカウンセリングをご利用くださいね。

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