ドックベストセメント治療が上手くいかない人の特徴
こんにちは。削らない歯科医の池村です。
ドックベストセメントとは、虫歯に侵されドロドロに溶けてしまった部分を再石灰化してくれる薬です。
ドックベストセメントの成分が、虫歯菌を殺菌しつつ、一度とろけてしまった歯の部分にミネラルを補充して再石灰化してくれる薬です。
通常だと削り取るべき部分が固まってくれるので、歯を削る量が減ります。
すると、歯の神経を取られるリスクがぐっと減ります。
虫歯を治療する私の立場としても、ドロドロに溶けた部分を除去している最中に歯の神経が出てしまうと、そのまま根管治療に移行しないといけないという尋常ではない緊迫感から解放されるのでとてもありがたい治療法なのです。
私は10年以上ドックベストセメントを治療に使ってきました。
プロトコールも、基本的にドックベストセメントをアメリカから日本に持ってきた小峰先生のご指導通りにしています。
小峰先生は、一回ですべての治療を終わらせて良い(ドックベストセメントを虫歯に入れて、その後、入口をプラスティックで封鎖)とはおっしゃっていましたが
私は歯の神経が生き延びるかを確認したいので、仮蓋で3か月程度置いて、むし歯が固まったのを確認してから詰め物をします。
そこはご紹介のプロトコールとは違うかもしれません。
※小峰先生ご自身は、仮蓋して1年後に来てねって言うとおっしゃっていました。
なんにせよ、魔法の薬ではないので、薬を歯に塗ったら万事OKとはなりません。
「ドックベストセメント治療が上手くいかなかった」という方は、大切なところを抑えていない可能性があります。
押さえておかないといけない大切なところとは、患者さん側と、ドックベストセメント治療を行う歯科医師側の双方にあります。
今回は患者さん側が気を付けるべき点をご案内します。
歯科医師が注意する点を列挙しても、このブログを読むのは患者さんだからどうしようもないですもんね。
患者さん側が気をつけるべき点
これら注意事項に気を配らないと、「ドックベストセメントを使用したけど、歯の神経が死んでしまったよ…」
という事態になりかねません。
この注意事項がかなり重要なのですが、口頭でご説明するとかなり長いのです。
忘れてしまう方も多いみたいなので最近は書面をお渡しするようにしています。
実物の書面はもっと長いですが、重要なところだけをかいつまんであなたにお伝えしますね。
1. 口腔内環境を清潔に保つ
口の中が細菌だらけで汚い状態なのに、ドックベストセメントによる虫歯の殺菌と再石灰化(ドックベストセメントによるミネラル補充)が上手くいくとは思えません。
虫歯菌が多いと、口の中に酸をたくさん産生します。
また、歯周病・歯肉炎で歯肉に炎症があると、炎症部位から酸性の滲出液が出ますので、やはり口の中は酸性に偏ります。
ドックベストセメントが虫歯を再石灰化したいのに、口の中がずっと酸性だと、いつまでたっても虫歯の部分は再石灰化しません。
その歯がもし運良く再石灰化したとしても、隣の歯や噛み合う歯に、また新たに虫歯を作ってしまう可能性もありますよね?
ドックベストセメント治療を成功させるためにはご自身の毎日の上手な歯磨きと、定期的なバイオフィルム除去が必須になります。
当院では、上手に歯磨きができるようになるまで何度でもサポートいたしますし、バイオフィルム除去を定期的にご案内しています。
当院にて、ドックベストセメントだけを行い、定期的なバイオフィルム除去を拒否した方はだいたい望ましい結果が出ていません。
2. 糖類(特に単糖類・二糖類)を口に入れない
小峰先生がドックベストセメント治療を成功させるうえで最も重要と指導されるのが、「調味料から何から、砂糖は一切やめて」
です。
虫歯菌の餌を常に口の中に供給していたら、虫歯菌の勢力が強くなってしまうのでドックベストセメントが効果を発揮できません。
当院では、口に入れるものをどのように選択するかもご案内しています。
これは本当に大切で、過去に全く生活習慣を改善してくれなかった方は、望ましい結果が出ていません。
運良く、虫歯が再石灰化してセラミックを詰めたとしても、後日状態が悪くなってくることも考えられます。
3. 仮蓋が取れている・しみるなどの症状が出ているのに放置する
実際にあったお二人の例を挙げます。
①当院でドックベストセメントを行った事例です。
この方は、ドックベストセメントの仮蓋が取れているのに数か月放置していたのです。
すると、溶けている歯にしみこむべきドックベストセメントのミネラル成分は口の中に散らばっていきます。
再石灰化は出来ておらず、それどころか放置した期間が長く、歯の神経は死んでしまっていました。
仮蓋は、取れた段階で早めの来院をお願いいたします。
②他院様で詰めたドックベストセメントの事例
ドックベストセメントを入れた同日にプラスティックで蓋をされていたが、冷たいものがしみ続けている、と当院にお越しになりました。
蓋がきちんとされていないと冷たいものがしみるという症状が出ることが多いので、プラスティックを削り取り、歯の中を確認しました。
なんと歯にヒビが入っており、そこからドックベストセメントのミネラルが口の中に溶け出ているようでした。
ヒビから遠い部分の虫歯は再石灰化していましたが、ヒビのそばの虫歯は再石灰しておらず、とろけているままでした。
再度ドックベストセメントを入れ、とろけている部分の再石灰化を確認してから、ヒビの部分をセラミックで覆ったことにより、しみるという症状はおさまりました。
ドックベストセメントは、虫歯の穴を封鎖しきれていないとなかなか再石灰化しません。
仮蓋が取れた場合、蓋が取れてはいないけどしみるなどの症状がある場合は対策を取らないといけません。
4. かみしめる癖がある、または奥歯がない・治療途中や被せ物脱離で咬めない歯が多い
かみしめる癖があると、仮蓋をかみ砕きます。仮蓋がしっかり機能しないと再石灰化が難しいです。
奥歯がない・治療中で咬めない歯が多いと、ドックベストセメントの仮蓋で咬み合わせを支えないといけない状態になってしまいます。
仮蓋は咬み合わせの力を支えるほど強くないのですぐかみ砕かれてしまいます。
すると、再石灰化が促されません。
これらの場合、仮蓋をする→かみ砕く
を繰り返しているうちに歯の神経が死んでしまう場合があります。
咬めない歯が複数本ある中で
「この歯だけ助けて下さい」
というのは難しいので、治療途中の歯を放置したり、被せ物がとれたりして咬み合わせがおかしくなっている状態を放置するのは止めましょう。
奥歯がない場合は、インプラント治療が必要です。
ここ1〜2年の変化
池村は10年以上使用しているので、
「これは楽勝。むしろケアでイケる!ドックベストセメントいらない!」
「ドックベストセメントにちょうど良い穴ですね」
「これはギリ神経残りそう」
「無理そう…。なになに?諦めがつかない?運がよければ神経が残るかもしれない
けど…一縷の望みに賭けますか?」
みたいな感じである程度結果が予想できます。
できていました!
ここ1〜2年ですが、診断の基準を変えないといけないなと思うような、今までと違う変な転機を起こす歯が出始めました。
肌感覚なんですが…
ダメですよね。肌感覚とか言ってちゃ…
わたし、臨床家だから…治ったらそれで良しとしてたんですよね…。
ちゃんと○○年は何人・何本ドックベストセメント治療をして、そのうちうまくいったのは何人・何本で、うまくいかなかったのは何人・何本、と計測しておけば良かった。
実はここ1~2年で、その「だいたいこんなもんだろう」が崩れています。
今まで
「このくらいならドックベストセメントで歯の神経が助けられるでしょう」と予想ができてい
た歯なのに、虫歯は固まっているのに歯の神経が死んでしまう
という残念な結果を出すケースがちらほら出ています。
わけがわからなかったのですが、患者さんに生活環境その他を聞き取りしていくうちに、一つの仮説がわたしの中で立てられました。
変な神経の死に方をする方は、新コロワクチン済みの人かもしれない。
アレ、血栓作るって言うじゃないですか。
歯の神経も、神経でもあるけど血管なんですよ。
なんか血流を阻害でもしてるのかな…。
もしかして?と思い至ったのは最近です。
なので最近は、ドックベストセメント治療を希望する方に新コロワクチンをやったか否か確認をし、やった方には場合によっては上手くいかない可能性もあるという説明が新設されました。
気付いたのがわりと最近なので、計測している症例数はまだそんなに多くないですが、やっていない人はいつも通り順調です。
というか、最近来院なさる方は色々調べてリスク回避している方が多いので、アレやってない方がほとんどなんですよね。
色々調べる癖があるから、普通の歯科ではなく当院を見つけてくれるのでしょう。
どちらにしろ、ドックベストセメント治療をやる羽目になるということは、歯にむし歯を作ってしまったということ。
むし歯を作る習慣を止めていきたいですね。
虫歯はなぜ出来てしまうのかという知識と、それを回避するための新しい生活習慣が必要です。
虫歯を作っては削り、を繰り返すのはお勧めしません。
根本的に悪くならないように、ご自分の人生のために必要なことだけを選択していけたら良いですね。
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