インプラントを強くお勧めする事例
こんにちは。
削らない歯科医の池村です。
先日、数年ぶりに来院した患者さんの話。
初診時から「こりゃやべえ」という奥歯があったんですが。
再びお会いした時にはもちろんなくなっていました。
歯がダメになる頻度
歯根破折が明るみになって抜歯されたようです。
で、なぜ当院に再来院したかと言うと。
うーん。法則通り…。
この記事の実例になるので、あなたにも順にご説明していきますね。
あ、ブログのネタにするよって、患者さんの許可はちゃんと取っていますよ。
2017年時点で排膿していた歯、2021年に抜歯される
2017年のレントゲン写真の当該部位です。
白く写っているのはいるのは銀歯です。
なんか歯根にピタっとしていない、隙間がある感じ、わかります?
歯根の股のところも、黒っぽく抜けていますね。
で。
歯周病精密検査です。
〇つけてある部分わかりますか?
ポケットが6ミリという病的な状態です。
実はもう2017年の時点で、歯根の股の部分は破折しています。
神経のない歯は劣化が早いですからね。 特に一番奥の歯は力が一番かかるので割れやすい。
本来なら抜歯症例です。
しかし、「もうこの歯、ダメだよ」とお伝えしても、痛みがないものだからほとんどの患者さんは信じてくれないんですよ。
形があると未練が残るのもありますね。
当院では歯を抜くことはしません
なので、当院の場合は痛くない歯を「この歯もうダメだね」と無理やり引っこ抜くことはしません。
だってまだ痛くないから。
ここで張り切って抜歯してしまうと、前歯や反対側にトラブルが続出してしまうんですよ。
ではどうするかと言うと、
1.数年のうちにダメになるだろうからインプラントのために貯金を始める。
2.ポケット6ミリに、常に細菌が溜まっているので不衛生である。現時点で膿が出ているので、ポケットの深い部分のバイオフィルム除去を3~4週間の頻度で行う。めちゃくちゃ腫れてくるのを防ぎ、壽命を少しでも延ばす。
この2つですね。
だからリスクはお伝えしつつ、寿命を延ばすための処置を継続して行う。
これやると本当にもうダメな歯でも3~5年はトラブルなく使っていた方が何人もいますね。
次にインプラントをしようと言うときにも、放置していた場合は炎症で歯肉がぐちゃぐちゃになってしまっているので歯肉が治る時間を置かないといけませんが、ケアし続けていればスムーズです。
しかし、良くはなりません。
かみしめるパワーで歯のひび割れが顕著になり、決定的にダメになるまで、月一でバイオフィルムを除去して、細菌による腫れる・排膿するというトラブルをやり過ごすだけです。
その間に、予測できている近日中に来るトラブルに備える。
すなわちインプラントのための貯金です。
でも…残念なことに、「今痛みがない」ということで、細菌除去の必要性・必ず来る未来への備えの必要性をあまり理解してくれない方もいらっしゃるのです。
ということで、この患者さんもすぐお見えにならなくなりました。
そして2021年にめちゃくちゃ歯肉が腫れて、どうにもならずにこの奥歯を抜いたそうです。
インプラントを1本入れておけば前歯にダメージは来なかっただろうけど…
そして、2023年6月末に再来院。
前歯が取れたという。
奥歯がなくなると前歯にも影響
このように、奥歯がたった1本なくなるだけで、前歯は取れてきます。
この歯はファイバーコアという柔軟性のある歯根を守る土台が使われていたからまだ取れただけだったけど、金属の土台だったら歯根破折を起こしていたでしょう。
歯根破折だったら、もちろん抜歯です。
1本の奥歯の欠損を放置すると前歯にダメージが来ます。
前歯を守るためには、抜歯された左下7の部位は早めのインプラントが必要です。
「インプラントなんて必要ない、儲け主義の歯医者が言うことだ!」
とおっしゃる向きの患者さんや先生もいらっしゃいます。
でも、かみ合わせは物理の法則。
かみ込む力は歯が少なくなっても変わりません。
親知らずを入れなければ大人の歯は28本。
28本で噛み合う力を受け止めています。
1本抜歯をしてしまうと、1本あたりの歯の負荷荷重が28/28だったのが28/27と分子が大きくなります。(4:46あたりをご覧ください。)
もし、他にも神経のない歯があれば、負荷荷重の増大でさらなる歯根破折を誘発する可能性もあります。そしてまた1本抜歯となった場合は28/26…
分子は変わらず分母が少なくなっていったら1本あたりの負荷は大きくなる一方。
最初の1本2本がダメになるのは数年スパンですが、歯の4~5本もダメになっていたら、残りの歯が悪くなるのは早いです。
4~5本も悪くなっていたら、そのトラブルを何とかしようとするとインプラントは1本だけでは済まないです。
抜歯したなら、その部位にインプラントを1本入れていたら、どれだけ口の中が安定していたか。
毎日歯が取れることに怯えなくて良いのです。どれだけ生活が安寧であったか。
担当の歯科医師はあなたの歯が・口が今後どうなるかだいたい予想がついています。
それゆえに、「今1本インプラントを入れることが他の歯を守ることになるんですよ」とお伝えしているのです。
前歯を守るためには、奥歯が必要
もちろん、儲け主義の歯医者さんはどうやら世の中にいるようですよ?
聞いた話ですけど、それはもうとんでもない提案をして色々やっている歯医者さんはいるようですよ。逆に、そんなとんでもない提案を飲み込む患者さんがいるのが凄いと思うくらい。
威厳のある先生なんですかね。うらやましいくらいです。
私などは本当に必要なことしか提案していないのに、女性だから?迫力のない見た目だから?疑われたり口コミに悪口書かれたりするのに。
「インプラントを勧める歯医者は胡散臭い」「インプラント、儲かりますもんね!」と悪態付かれたこともありますよ。
言っときますけど、インプラントは準備も大変だし言うほど儲からないから。
自費診療=儲かる=悪徳
みたいな安易な発想、良くないですよ。
例えばね、私も所属している点滴療法研究会の会長の柳澤厚生先生のお言葉ですけど、
「自費診療だから儲かるでしょう?ってよく言われますが、別に言うほど儲かってないですよ。普通です。それでもわざわざ自費診療を行う理由は、例えば治療法が10あったとしても、保険診療だと3つくらいしか選べない。もっと選択肢を増やすための自費診療なんです。」
的なことをおっしゃってましたよ。
もう、まさにそれ。
あなたに本当に必要な治療を提案しているだけなんですよ。
使える歯をむりやり何本も引っこ抜いてそこにインプラントを勧めて」いたら、それは悪徳ですけどね。
話を戻しますけど、儲け主義の歯医者なんて歯科界でもよほど悪目立ちしています。全員が全員そうではない。
皆、やり方はどうであれ、あなたの力になりたいと思ってる。
しっかり咬めるようになり健康寿命が延びて感謝してくれている患者さんが多数いらっしゃることをすべて無視して、インプラントの失敗事例ばかりに目を奪われてご自身の健康になるチャンスをフイにするのはもったいないですよね。
確かに、咬む力が弱い、華奢な感じの女性なら、たった1本の奥歯がなくなったくらいで前歯にまで影響が波及しないことももちろんあります。
でも、今回の方は顎の発達した男性でした。
そしてすでに「前歯が取れる」という現象を起こしています。
ファイバーコアを再度セットしましたが、過剰な負担がかかったらまたすぐ取れてしまうでしょう。
この方は
「インプラントは必要だと思うがすぐすぐは決断できない」
とおっしゃるので、応急処置としてセットしたセラミックの前歯の裏側を2㎜ほど削りました。
セラミックの歯は薄くなってしまうけど、奥歯がないと下の前歯が上の前歯を突き上げてしまうので仕方ないです。
しかし、今回このセラミックの前歯の負荷を取ったことにより他のトラブルも予想されてしまいます。
それは、他の前歯にかかる負荷が大きくなること。
両隣の歯は被せていないご自身の歯なので、
おそらくエナメル質が欠けるか、歯が硬く丈夫であれば出っ歯すきっ歯になっていくか。
はたまた歯槽骨がヤラれて歯がグラグラしだすか。
前歯を守るためには、奥歯が必要なのです。
昭和の時代に、「奥は見えないからどうでも良いや。前歯は見えるからセラミック被せて」
なんてことを言う患者さんがいたようですが、このような物理的な法則があるゆえに、前歯だけ張り切った治療をして奥歯は放置、というやり方はお金をドブに捨てるのとイコールなんですよ。
積極的に治療して、手のひらから砂が零れ落ちるように悪くなっていくより、治療しないためには何をしなきゃいけないかを知って、対策を取るのがあなたの歯を最も損ねない方法です。
ご興味ある方はどうぞお問い合わせ下さい。
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